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ラベンダーの空

ラベンダーの空 6. メリーベルの手紙-2

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「ふぅ~~。終わった~~」
ようやく授業が終わり、ラベンダーは大きくため息を吐くようにそう言って、両手を大きく前に伸ばしてテーブルにうつ伏せる。

「お疲れさん」

「ん?あ・・・。教えてくれてありがと」

「いえいえ。余りにも理解力がないんで、見てられなかっただけですから」

「あ~、こっちが素直にお礼を言ってるのに、普通そういう言い方するかな?」

「素直ね~?」

「フン」

「それにしても、あれな」

「ん?」

「幾何学はだめだけど、薬草学はすごいなお前」

「まあね、こんなところに住んでるし」

「っていうかさ、薬草学って大学分野だろ?さっき『基礎大学講座』って書いてあった」

「うん。医薬科に進むつもりだから、聴講してるの」


「ふ~ん」

「これでも一応、アカデミアの医薬大の一次試験は通ってるんだよ」

「アカデミア?一次試験?」

「うん。後は、研究レポートが通れば、晴れて医薬大生なんだから」

アカデミアとは、学園国家だ。標高の高い山や点在する島を持つ国が多いこの世界で、アカデミアは通信教育学生を多く受け入れている、学園国家だった。小学校から大学院まであるアカデミアという学校を中心に建国されたその国は、居住地などの理由で通常の生徒のように学校に通うことができない生徒を、通信教育学生として受け入れている。

学生は、大学の基礎までは単位制の通信教育で受講することができ、上の学校への進学希望者はアカデミアの大学の寮に入って勉強を続けることができるシステムになっていた。

「この前、一緒に取りに行ってもらった薬草あったでしょ?」

「ん?ああ、あれか」

「あの薬草に関してのレポートをまとめているところなんだ・・・」そういいながら、今日アンソニーが持ってきたメリーベルの写真を取り出した。

「ん?」

「メリーベルのためにもね、完成させたいって思ってる」

「メリーベルのため?メリーベルがお前を目標に頑張ってるから?」

「あ、それもあるんだけど・・・。メリーベルの病気を治すため・・・かな?」

「メリーベルの病気?」

「うん。最初は風邪みたいな症状だったらしいんだけどね。次々と症状が変わるの。原因は不明らしくて・・・」

「そんな病気があるんだ・・・」

「うん。症例が少なくて、病名もはっきりついていないんだけど・・・。でも最近、小さな子供達の間で増えてきているらしいの。だから、メリーベルの主治医と連絡を取って、私も協力しながら治療してるんだ。今の症状には、この前とってきたあの薬草が良く効くらしくてね。だから研究してみようって思ってるんだ」

「ふ~ん・・・。でさ、その病気治せそうなの?」

ジンの言葉に、一瞬ラベンダーの体が固まる。

「もう長く入院してるんだろ?」

「え・・・、うん」

「もしかして、メリーベルの病気って、不治の病とかだったりして?」

「・・・・」

なにか様子がおかしいことに気づいてジンが顔を上げると、ラベンダーはうつむいて肩を小さく震わせていた。

「ん?ラヴァン?」

「なによ。ジンなんか何も知らないくせに!」

「なんだよ、なにを急に怒ってるんだよ!」

「メリーベルの病気は、メリーベルの病気は・・・治るわよ!絶対!私が治して見せるんだから!」

そう叫ぶと、ラベンダーは勢い良く2階に駆け上がって行ってしまった。

「あ・・・・」

「どうしたの?」自室にいたフローラが、その物音を聞いて慌ててやってきた。

「俺・・・またやっちゃったみたいです」

「え?」

「メリーベルの病気のこと。そんなに重いって思ってなくて・・・。治らないって思ってなくて・・・」

ふう、とフローラは大きなため息を一回ついてから、ジンのほうに向き直った。

「仕方がないわよ。ジンは知らなかったんだし」

「でも、俺」

「ラベンダーはね、命に対して敏感っていうか、優しいのよ」

「ええ」

「あの子は、すべての命に対して優しいの。例え草花に対してだって、心から涙を流すことができる。こんな自然しかないところで育ったせいかもしれないわね?だから、メリーベルのことも、あの子なりに、何か役に立ちたいって思ったんでしょ?だから、薬草師ではなくて、もっと病気の治療にかかわることができる医薬師になりたいって言い出して。薬草学の講義を受け始めたのも、メリーベルと友達になってからなのよ」

「そうだったんだ。・・・俺、謝ってきます」

「ううん。今はあの子も一人になりたいと思うから、そっとしておいて」

「でも・・・」

「今日はもう遅いから、あなたも休みなさい。ラヴァンなら、きっと明日の朝はけろっとして起きてくると思うから」

「・・・・。じゃあ、おやすみなさい」

「ええ。おやすみなさい」




自分の部屋に戻ってきてから、ジンはラベンダーの後姿が頭から離れなかった。
片手を口元に当て、泣き声を堪えるようにして階段を駆け上がっていった後姿を。

「ラヴァンはもう寝たのかな?」

隣のラベンダーの部屋からは、物音一つせずひっそりとしている。それがかえって気になって仕方がなかった。何かを吹っ切ったようにブルッと頭を振ってから、ジンは部屋を出てラベンダーの部屋の扉の前に立った。



次へ。



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